2014/06/22

ジャカルタで行われたRising Expoの出場全13社を紹介:優勝はスマホ上のバーチャルクレジットカードを目指すMatchmove



6月17日に、CyberAgent Ventures主催で「Rising Expo Southeast Asia Round」がジャカルタ・グランドハイアットホテルにて行われた。
このRising Expoは、サイバーエージェントベンチャーズが2012年から開催している資金調達・事業提携マッチングを目的としたピッチイベントで、今回は東南アジアで初めての開催であった。今年は既に韓国、中国で開催され、そして8/8には日本で開催される。

クローズドなイベントのため、プレゼンで発表された具体的な数字等は伏せるが、参加した各スタートアップの概要を以下にまとめる。なお、順位は当日参加した投資家の投票によって決定された。



上位3社から

1位: Matchmove(シンガポール)
東南アジアでのクレジットカード浸透率は国によっては約2%と非常に低く、スマホを所持しながらクレジットカードを持ってない人口は全世界で5億人以上存在するという。このため、オンラインでの決済が出来ないユーザーが非常に多く、$20のiTunesカードが、$40で転売されるようなことも起きているそうだ。Matchmoveはスマートフォン上でのバーチャルクレジットカードを提供する事で、この大きな課題を解決しようとしている。
ローカルATMからの入金、銀行振込、友人や家族からの送金をチャージし、支払を可能にするので、仕組みとしてはデビットカードに似た感じだ。既にアメリカンエキスプレスと提携してシンガポール国内でサービス展開を始めている。MatchmoveはもともとECソリューションなどを提供するPaaS企業で、アメリカンエキスプレスも顧客の一社であったことから今回の提携に結びついたようだ。
ファウンダーはCiscoのアジア戦略&オペレーション部門などを率いてアジアで活躍した後、起業家/投資家として数件のExit経験をもつシリアルアントレプレナー。
ファウンダーのShailesh Naik氏
サイバーエージェントベンチャーズFBページより)


2位: VIP Plaza(インドネシア)

今年2月に立ち上がった、ブランドファッションアイテムのフラッシュセールサイト。毎朝10時から始まるセールでは、3-4ブランドずつ最大80%のディスカウントで提供。
通常ファッションECがブランドから在庫を仕入れて委託販売を行う期間は3-6ヶ月だというが(それでも売れ残ってしまう在庫もある)、VIP Plazaでは緻密に組まれたオペレーションとフラッシュセールという販売方法で、ブランドから仕入れて商品が購入されるまで「2週間」という驚異的なスピードを実現している。
既にリピーター率も高く、ブランド数、売上ともに非常に順調な伸びを見せている。今後は他カテゴリ、地域への展開をしていくという。
ファウンダーは、元楽天でファッション部門のマネージャーを経験した後、楽天インドネシアの立ち上げをしていたTesong Kim氏。創業時にCyberAgent Venturesが出資している。


3位: Taamkru(タイ)

子供向けのモバイル教育アプリを提供。タイのAppストアではKids部門、教育部門で1位を獲得している。オトナの固まった脳には意外と難しい6歳向けの問題をデモし、プレゼンは盛り上がりを見せていた。
ファウンダーはhaamor.comという、米国の医療・健康関連情報ポータルであるwebmd.comのモデルに学んだタイ語のサイトを立ち上げ、2年で700万ユニークビジターを有する規模に成長させた人物。



■ Foody.vn(ベトナム)
ベトナムのNo.1グルメ口コミサイト。ファウンダーはオーストラリアの大学を卒業し、IT企業でセールスやマーケティングに従事した後、3年前にFoody.vnを立ち上げた。
Foody.vnは2012年の始めにCyberAgent Venturesからシード資金を調達している。


■ Bridestory(インドネシア)

インドネシアでの結婚式を考えるカップル向けに、ローカルのウェディング業者の情報をピンタレスト的なUIで提供するキュレーションプラットフォーム。東南アジア全体で$13.6B、インドネシアだけでも$6.2Bものウェディング市場が存在するという。オーストラリアなど海外のカップルがバリ島での挙式の会場を探すパターンでも使われ始めているらしく、そういったニーズは大きそうだなと感じた。
オペレーションを開始してまだ2ヶ月ほどだが、既に多くのベンダーが登録している。
ファウンダーチームは、自身で立ち上げたデジタルマーケティングエージェンシーを2012年にグローバル広告会社WPPに売却した実績を持つシンガポール人と、オーストラリア人のコンビ。


■ Priceza(タイ)
タイのNo.1価格比較サイト。
ご存知のように東南アジアでは国内外から多数のECプレーヤーが出現し、リスティング広告の出稿合戦のようになっている。Pricezaはユーザーにとってのオンラインショッピングの玄関となり、EC事業者にとってより質の高い広告媒体を目指す。
タイでは月間数百万単位のアクティブユーザーが存在。現在はインドネシアにも進出し、他の国内競合サイトに急速にキャッチアップしているという。CyberAgent Venturesが出資。


■ Touchten(インドネシア)
インドネシア随一のモバイルゲームスタジオとして既にRamen ChainやInfinite Skyのようなヒット作をいくつも持ち、今までの累計DL数は数百万以上。現在はそれに加えて、ゲーム開発者向けに、ユーザーリワード機能を持ったモバイルゲームプラットフォームを開発中。
元々ゲーム愛好家であったインドネシア人のファウンダーは、早稲田大学に留学していた事もあり、日本語も堪能。これまでにインドネシアのIdeosource, シンガポールのUOB Venture Management, CyberAgent Venturesなどから資金調達を行っている。


■ Kark(インドネシア)

カードと組み合わせる事で展開していく子供向けスマホゲームを提供。ゲームで使用するカードはトレーディングカードのようなパッケージで店頭で販売されており、既に数十万枚ほど販売しているとのこと。
KarkはシンガポールのインキュベーターJFDIを2012年に卒業した後、インドネシアのシードファンドIdeosourceから資金調達している。


■ Candy(フィリピン)

Candyという新興国のプリペイド文化・現地に住む人の課題に即したモバイルリワードプラットフォームを提供。
広告主が提供するアプリをダウンロードさせることで、ユーザーには携帯のプリペイド残高(ロードと呼ばれる)を報酬としてバックする。
インターネット環境にアクセス出来ないユーザーに対しては、SMSベースで達成出来るミッションも用意している。
既にフィリピン、インドネシアで運用し、着実にユーザー数を伸ばしている。
今後は地域展開を進めるとともに、近く新しいプロダクトをローンチ予定とのこと。

ファウンダーは、DeNA出身の深田洋輔氏。つい先日、GREE Ventures, CyberAgent Vantures, Incubate Fundへの約1.3億円の第三者割当増資を実施している。


■ Coda Payments(シンガポール)

東南アジアでの課題の一つは、クレジットカードの普及率の低さや、"Unbanked"と呼ばれる銀行口座すら持たない人口の多さだ。
そんな問題を解決すべく、ゲームパブリッシャー向けにプリペイド残高を使ってWeb・アプリ上で決済を完結出来るAPIを提供している。東南アジア各国の大手通信業者と提携し、gumiなど東南アジアで展開する大手ゲーム会社に採用されている。
プレゼンしていたのは共同創業者でCOOのカナダ人。Skype共同創業者のToivo Annus、Golden Gate Ventures, CyberAgent Ventures, GMO Venture Partnersなどから総額$3M以上を調達している。


■ Bornevia(インドネシア)

ソーシャルメディア、メールなどの企業アカウント宛のメッセージに対して、共有のIn-boxなど簡単にチーム内のメンバー誰もが対応出来るWebベースのダッシュボードを提供。
ファウンダーはミシガン大学でコンピュータサイエンスを学んだ後、Microsoftが買収したYammerでエンジニアとして働いていたインドネシア人。


■ Tiki.vn(ベトナム)
Amazonの如く、2010年にオンライン書店としてスタートし、今やベトナム国内No.2の総合ECサイト。書籍の販売ではダントツの1位。
ベトナム国内では他の競合サービスが軒並み終了してしまったので、今やLazadaとの一騎打ち状態だ。Tiki.vnは、2012年にCyberAgent Venturesから、2013年に住友商事から資金調達している。


■ Hangtot.com(ベトナム)

TaobaoのようなベトナムのB2B2Cマーケットプレイス。一日に万単位の訪問者数があるという。Hangtotを運営するDKTは、Hangtotの他にもShopifyライクなBizweb.vn、MailChimp的なBizmail.vnなども運営しており、今年始めにCyberAgent Venturesからの資金調達を発表している。ベトナムではタイやインドネシアのようにFacebookがそこまでEC事業者に使われる事はなく、Bizweb.vnのようなサービスを使ってオリジナルECサイトを作る流れが始まっているとのこと。

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ご覧のようにインドネシアをはじめ、ベトナム、タイ、フィリピンからスタートアップが参加し、ファウンダーの国籍もローカルからカナダ人、オーストラリア人、日本人など様々。それぞれのファウンダーと話してみて共通していたのは、みな東南アジアの可能性を確信し、そこに賭けていたことだ。また、運営サイドが事前スクリーニングしているだけあり、既にある程度のトラクションを持った実力のあるチームが多く、ピッチを聞いていても非常にエキサイティングだった。
投資家サイドも、日本の著名ベンチャーキャピタル・事業会社のみならず、先日$80M規模のファンド設立を発表したMonk's Hill Venuresや、Jungle Ventures、インドネシア国内トップの財閥Sinarmasなど東南アジアの著名なプレイヤーが多数参加し、投資家同士のネットワーク作りという意味でも有意義なイベントであった。
日本からも多くのベンチャーキャピタル・事業会社が参加していたが、東南アジアへ実際に投資実行しているプレイヤーはまだまだ少ないのが現状。欧米資本と比べ、東南アジアでは日本の地の利も活かせるし、文化的にも親日国家が多いので恊働しやすいのではないかと思う。東南アジアの可能性を信じ国内外から優秀な起業家はこの地域に集まりつつある。日本から東南アジアへの投資をもっと盛り上げていきたいと心から思った夜だった。
参加VC一覧(当日パンフレットより)

今回優勝のMatchmove社と準優勝のVIP Plaza社も参加するであろう、8/8に行われるRising Expo決勝の日本ラウンドは、6/23(月)11時まで出場スタートアップ受付中とのこと。
東南アジアラウンド同様、日本ラウンドも国内外から優秀な起業家・投資家が集まる、絶好の機会となると思うので、資金調達等狙っているスタートアップの方は是非!
http://www.rising-expo.com/ja/jp/

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